【フィンランドで知ったこと】月明かりを歩く

フィンランドの北極圏では、冬には真っ暗な極夜が訪れます。
日が登るのは午後の2〜3時間ほど。お昼頃に少しずつ空が明るくなってきて、朝焼けが始まり、朝焼けがそのまま夕焼けになって、太陽は沈んでいきます。

この地の名物といえばオーロラ。オーロラは晴れている夜に見えるので、夜更かしをして窓の外を覗いてはオーロラが出ていないかチェックします。

このとき、大切なのは「家の灯りを消すこと」。人工の明る過ぎる灯りがついているとオーロラは見えなくなってしまいます。あまりにも田舎で街灯りがないのも、この地でオーロラ鑑賞が名物になっている要因の一つでしょう。

極寒の地、真っ暗な夜の国は、恐ろしいものではないかとイメージしていました。

しかし、よく晴れた夜の雪深いラップランドは、驚くほど「明るい」のです。

月明かりが世界を照らして、深く積もったフカフカの雪がその月明かりを反射してくれるので、木々が生い茂る森の中もスイスイと歩いていけます。さらに月明かりを雪の粒が反射するキラキラと光るダイヤモンドダストは、どうして月だけの明かりでこんなにも輝けるのだろうと不思議なほど。

歩くたびに、角度を変えるたびにキラキラと瞬く雪の粉は、小さな宝石を敷き詰めたような景色です。

思い出せば、古文の授業で習う文章にはよく「月がとても明るいので、夜道を歩いて云々…」という表現がありました。学生時代には「月明かりで道が見えるわけないじゃん」と思ったものでしたが、それが実際、はっきりくっきりと見えるのでした。

人は闇を克服するために、灯りを発明しました。
しかしそれによって、闇はいっそう暗くなってしまったのだろうと思います。